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鳥取大学医学部 地域医療学講座
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追補) ハワイ大学

with Dr.Kasuya
with Dr.Kasuya
2012年1月に1週間、ハワイ大学で開催された医学教育に関するワークショップに当教室の谷口教授、浜田准教授と参加しました。ハワイ大学で行われる医学教育は、PBL(Problem based learning)という非常にユニークな形式で知られていますが、これに関する概論から実際にハワイ大学の医学生を交えて指導する実技まで幅広く教わりました。
まずPBLとは、一言で表すとするならば、医師になってから行う「症例検討に近いもの」といえるでしょうか。実際には多くの点で異なりますが、自分が医学生であった十数年前には似たような教育はなかったため、こう表しておきます。的の絞られていない患者情報について議論を行うため、試験の症例問題とは異なり非常に実践的に見えます。1グループは4、5人の学生で構成され、グループごとにチューターが指導にあたります。指導といっても、よくありがちな教育者が主導するものではありません。議論の進行は学生の中で選ばれた司会者に委ねられます。チューターの役割は、議論が活発に行われ、各人が均等に発言しているか見守ることが主体で、議論が行き詰った際、時に助言する程度です。驚いたことに上級生がチューターとして参加することもあり、まさに大学をあげて全員参加の授業となります。また、積極的な発言や学習意欲の向上を目的に議論の方向性に制限はなく、学生は自由に発言できることも特徴です。このため診断と治療ばかりにこだわるのではなく、介護支援や保険制度などにも話を拡げることもできます。授業中に飲食が許可され、教授が話している前でお菓子や軽食をぱくついているといった光景も議論を促進するひとつの工夫です。最初はアメリカンな雰囲気に呑まれていましたが、考えてみると自分も国家試験前の勉強会では菓子を頬張りながら自由に意見交換し、互いにミニレクチャーみたいなこと行っていたことを思い出しました。要は、学ぶことという行為をネガティブなこととリンクさせないこと、これが学習に興味を持たせ、継続させる秘訣なのだと気づかされました。こうしてactive learnerといわれるハワイ大学の学生が育つのです。
PBLの詳細に話を戻します。先ほど自由な方向性で学べると述べましたが、さすがにそこは授業ですから大枠は決まっています。 Stage1(問題提示から学習すべき事柄の抽出)、Stage2(個人学習)、Stage3(各グループの発表と情報共有)の流れに従って学習を進めます。特に重要なのは、取っ掛かりであるStage1です。ある症例に対して、まずFacts / Profilesを挙げていきます。これはどういう患者であるのかを把握するもので、症状の訴えや既往歴、職業歴にとどまらず、独居で年金暮らしといったような社会的な背景にまで及びます。やはりここでも試験とはなり難い、しかし実臨床では大きな問題となることまで抽出するのです。これらをもとに病態につながるHypothesisを立てます。具体的に言えば、ここ数か月の体重減少の原因は、妻に先立たれた時期と一致しており栄養状態が悪化、あるいはうつ状態になったからだといった具合です。さらにこの仮説を証明するには、何を知る必要があるかNeeds to knowの項へ進み、先の例では血液データ上栄養状態はどうか、うつのスクリーニングスコアはどうなのかなど議論します。同時に身体所見や血液検査データなどの情報開示がなされていき、たくさんの仮説の中からより確からしいものを導いていきます。最後に学習項目learning issueとして、各
人が興味をもった事柄を宿題としてあげていきます。ここでもチューターは、あれこれしなさいと指示することはありません。Stage2では、自分達で割りふったテーマについて学習を行い、発表準備に入ります。ここでも学ぶことに貪欲な学生は、インターネットや書籍だけでなく、課外でも積極的に教師陣とやりとりを行います。ハワイ大学では、PBLが授業の大半を占め、講義はこれを補足するため週に数時間行われるのみといいますから、自から吸収する姿勢をもつのは必然的なことに見えます。こうなるといったいどれだけ学生は勉強すれば気が済むのかと不思議になります。しかし、「勉強するのは当たり前、医者になってからはさらに苦労するのに。でも、今、PBL楽しいですよ。」と口を揃える学生の言葉に説得力があり、非常に印象的でした。Stage3では、いよいよ発表になります。これまで授業というのは、インプットしたものを頭に残し、テストでアウトプットするという一方向性の感覚がありました。赤線を引いたノートや教科書を見直して記憶の定着をはかるスタイルです。しかし、ここでは人前で喋ると質問が飛び交い、インターラクティブな学習が繰り広げられます。うまく表現できませんが、知識に根っこがついて網をはり、不動のものになる姿がみてとれます。ほかにも効果的な学習法と思えた点があります。それは一つのテーマであってもいろんな表現方法があるということです。生理学や疫学的観点など多方面からアプローチするといった学問的なことだけならまだ想像がつきます。それだけでなく、即席で学生を模擬患者に仕立て狭心痛を実演させたり、難解な話を板書し、理解を確認しながら質問形式で解説を加えるといった人気塾講師のようなプレゼンをします。得た情報をどれだけ咀嚼し自分のものにしながら、どういう形で他人に与えるべきか彼らは知っているのです。
 以上のようにハワイの開放的な雰囲気の中、楽しみながら学んでいる学生の姿をみると日本においても同様の教育を行いたいという気持ちにかられます。丸ごとハワイ直輸入ではだめですが、日本にあった、鳥取にあった学生教育を模索する良いヒントを与えて頂いた、そう思える1週間でした。(石田)
帰国後、早速やってみました!
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