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韓国でのKOHI International HRD Forum -The Retrospection of Primary Public HealthCare-に参加して(2102/10/19)

フォーラムでのパネルデイスカッション
フォーラムでのパネルデイスカッション
10/18-20の間、韓国のオソンで開かれる第1回KOHI国際フォーラムに参加してきました。KOHIとはKorea Human resource development Institute of Health and Welfareの略号で、日本でいうと厚生労働省人材開発局みたいな部署です。第1回目のフォーラムでは、各国での保健医療人材育成の課題がテーマでした。どうして私が呼ばれたかというと、KOHIから韓国ソウルのCLAIR(The Japan Council of Local Authorities for International Relations:日本の地方自治体の海外支部)に打診があり、日本の中山間地の保健医療の課題について話せる演者を探しているということで、白羽の矢がたったとのこと。私としては、中山間地のことなら鳥取県江府町での取り組みを紹介すればいいのかなと思い、気軽に引き受けたのですが、いざ講演の準備となると大変でした。なにしろ一次予防とプライマリケアを担う人材育成となると、医師だけでなく保健師・看護師など専門外の分野も入ってきますし、英語でプレゼンしないといけないというプレッシャーもあります。とにかく、江府町・日南町の保健師さん、鳥大保健学科の松浦先生、教室の伊澤加恵さんらに助力してもらいつつ、何とかスライド原稿を準備しました。
韓国は鳥取県からすぐ近くなのですが、空路のタイミングがあわず、結局、東京国際空港経由の大周りで金哺空港まで行きました。18日の夜は、CLAIR所長の安本さん達とソウル市内で焼肉と韓国焼酎を堪能、ちょっと飲みすぎた。翌朝、通訳のLee Kyug-Jinさんとおちあい、会場のあるオソンまでKTX(Korea Traffic Express:韓国版の新幹線)で移動しました。オソンはソウルから南へ150kmにある新しい都市です。ソウルの人口集中があまりに激しい(1500万人)ため、大統領が副都心を作るという目的で、政府官庁などをオソンへ移行しているとのこと。オソンでは、まだ新しいビルやアパートがいたるところで建設中で、まだ街作りの最中といった雰囲気でした。フォーラムがはじまるまでの間、世話人のKim Jinhak教授やKOHI責任者のLee Sang Yong氏など、KOHIやまわりの厚労省関係者と面談させていただき、韓国有名料理店でいっしょに昼食をいただきました。Lee氏は広い人脈を持つ人らしく、各機関の長が同席され第1回フォーラム開催を讃えているという印象でした。
フォーラムでは、ペルー、韓国、アフリカマウアイ、日本からの報告という形をとりました。ペルーからの参加者はスペイン語しかわからないので、スペイン語⇒ハングル⇒英語という2段階の翻訳が必要で、なんとか同時通訳でクリアしました。ただ、韓国ではへき地の保健医療は、日本の保健師にあたるcommunity health practitioner(CHP)が1地域を1人で担当し、予防から一部の医療(薬を処方できる)まで担っているのは驚きでした。医師がいないわけではないのですが、ほとんどの医師はソウルなど都市部の民間医療機関に勤務することを望み、だれも過疎地区に行きたがらないこと。これに対して、韓国は兵役義務があるので、2年間へき地の保健所で公衆衛生医として勤務すれば兵役免除というルールを設け、多くの医師がこの制度を利用して地方での勤務をおこなっています。ある意味、日本の事情とよく似た面でもあるのですが、義務年限が終わればさっさとソウルに帰ってしまうので、本当の意味での解決にはなってないようにも思いました。いずれにせよ、医療過疎地区ではCHPが保健医療でたいへん大きな役割を果たしている様子です。韓国では、へき地が多いのかどうかよくわかりませんでした。ただ、韓国の「地方」というのは、日本でいう「中央と地方」、「ex.東京と鳥取」のイメージとは、全く違う事情があるようです。韓国は人口のほとんどがソウル、プサンなどの大都市に集中し、それ以外の地方は第一次産業を主体とした人たち、高齢者の多い構造となっています。鳥取がいくら田舎だといっても、生活基盤となる道路、通信、エネルギーなどは整備され、不都合なく暮らせますが、韓国の「地方」ではそうもいかないようです。とくに、教育熱心な韓国では、子弟をなんとか都市部の大学にいれたいという気持ちが強く、難関突破で有名大学に入り大企業に就職すると、絶対に地方にはもどりません、そしていよいよ都市集中が加速していきます。何だか昔の高度経済成長時代の日本をみるようです。通訳をしてくれたLee女史も、オソンは暮らしにくく友達もいないので、毎日ソウルからバスで2hかけて通勤しているとのこと。彼女によると「韓国の人はみんなソウルが大好きです」と。私の講演のメッセージとしては、鳥取県江府町でのモデルを示し、行政・医療・大学が連携してその地域の保健課題を解決していく過程そのものが、最良の保健医療人材教育(学生教育と同時に保健師サイドにとっても)になるというものでした。おそらく参加者の多くは理解してくれたものと思います。
フォーラムで一番印象に残ったのは、アフリカのマラウイから参加したSusie Kim女史の報告でした。彼女はすでに70歳ですが、マラウイ初の4年制看護大学設立に奔走しておられます。なぜマラウイで働くのか理由を尋ねてみたところ、「もともと韓国の看護教育の泰斗として引退した身であったが、マラウイで苦労してキリスト教会を作り医療に尽力していた友人が癌で亡くなる時に、(ぜひあなたに)と後任を託されたので、これも天命だと思い67歳からマラウイに赴き、看護大学設立のために頑張っている」とのこと。マラウイはもちろんインフラ不足で経済状況も厳しく、エイズをはじめとする伝染病がはびこり、看護師など医療スタッフの人材育成は急務らしい。私は、彼女と直接話をしてみて、その明るさとあふれんばかりのエネルギーに圧倒されました。KOHIのLee所長も彼女のことをたいへん尊敬している様子。彼女と話していると、何か彼女のために自分ができることはないかと思ってしまう、そんな魅力にあふれる人物でした。
短い滞在でしたが、韓国の保健医療を担う面々と、膝を突き合わせて議論できたことは、大きな収穫でした。それぞれの国にはそれぞれの課題がある、日本も先進国といっても例外ではない。こんな当たり前のことを、あらためて考えさせてくれたフォーラムでした。やはり、いろいろな立場の人と出会い、率直に話を聞いてみることは、自分を豊かにしてくれる貴重な機会なのだと思います。(谷口)
マラウイから来られたKim Susie女史と
マラウイから来られたKim Susie女史と