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鳥取大学医学部 地域医療学講座
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波照間島を訪問して - 朴先生を訪ねて-(2014/5/6-9)

ゴールデンウイークの終わりから日本最南端の島、波照間島を訪問してきた。
波照間島の診療所(沖縄県立八重山病院附属波照間診療所)で昨年から働いている朴先生を訪ねる旅だった。
朴先生は鳥取大学卒業で、沖縄県立中部病院で初期研修を受け、家庭医後期研修として島医者養成コースを選択し昨年から波照間島で勤務している。彼は在学中からハクマタ活動をはじめ、全国の学生をまとめる活動などリーダーシップを発揮してきた人である。
初期研修の沖縄中部病院は「眠る時間がない」ほど忙しかったらしいが、いまは島唯一の診療所でゆったりと仕事をしている。島の人から譲り受けたヤギの「ナナちゃん」と暮らしている、なんて聞けば、「のんびりしていていいなあ」と思うかもしれないがそれは違う。
波照間島は日本最南端、台湾の東部に位置し、鳥取から行くには、那覇、石垣を経由して、石垣から高速艇で1h程度。波浪の影響ですぐに欠航してしまうので、今回もあぶないところだった。
日本最南端の島 波照間島
日本最南端の島 波照間島
石垣-波照間の高速艇(波照間港にて)
石垣-波照間の高速艇(波照間港にて)
高速艇の注意事項(腰椎圧迫骨折の注意)
高速艇の注意事項(腰椎圧迫骨折の注意)
朴先生と記念写真
朴先生と記念写真
島の人口は600人弱、産業はサトウキビと観光、島の中央部に診療所、保健センター、小規模多機能施設、郵便局、小中学校などがある。一日に外来を訪れる患者はそれほど多くないが、島の人たちの健康と命を預かっているという責任は、そこで働いたものでないとわからないストレスがある。
診療所で指導する朴先生
診療所で指導する朴先生
在宅訪問で膝関節注射
在宅訪問で膝関節注射
小規模多機能(すむずれの家)
小規模多機能(すむずれの家)
私が訪れた時期は、ちょうど研修医が見学にくる時期と重なっており、東京出身で沖縄中部病院で研修中の吉田先生が訪問していた。彼といっしょに朴先生の仕事ぶりを見せてもらったが、朴先生がいかに慎重に仕事をしているか、何度も考えさせられる場面があった。患者数は多くないが、時間の許す限り患者さんの話を聞く、意外と島の人たちはストレスが多く抑うつ傾向の人が多いこと、気を使ってなかなか本音をいってもらえないこと、家庭状況や経済状況がわかるぶんだけ医学的判断に迷うこと。
2日目の夜に3人で飲んでいるとき、急患の呼び出しがあった。90歳女性の慢性心不全の急性増悪であった。酸素とニトログリセリンスプレーで少し持ち直すも、診療所の酸素ボンベは3hしかもたない。石垣島から海上保安庁のヘリコプターを呼ぶべきか?朴先生の判断は、「この人は90歳だが先日まで畑にでて元気に働いていた、娘が石垣島にいる、治療すればたぶん波照間にもどってこれる」そう判断してすぐにヘリを呼んで石垣へ搬送となった。診察からヘリ搬送の判断まで30分程度。なかなか難しい決断だったと思うが、いつも手助けしてくれる近所のおばちゃんの助けを借りながらの、素早い決断だった。
着陸用の空港まで救急車で搬送し、ヘリを待つこと15分、石垣島からドクター同乗でやってきた。
すごいなあと思うのは、患者到着後しばらくして患者の状態と治療指針などが、八重山病院の先輩からメールで知らせてくれることだ。それに部分的だが電子カルテでその患者の経緯を確認できる。朴先生は島にひとりで働いているが、その後ろには多くの仲間が立っている、その安心はとても大きいと感じた。もちろん、島の医者として責任が軽くなるわけではないし、島医者の仕事はさまざまな分野にわたる。
島名産の泡盛(泡波)をのみながら地域医療談義
島名産の泡盛(泡波)をのみながら地域医療談義
翌日は、島の小中学校の生徒の健康診断だったが、養護教諭の先生とも顔見知りで、生徒の家族のことまでほとんど理解している。午後には、診療所の隣にある小規模多機能施設(すむずれの家)で、認知症の人たちの診察やスタッフとの話。スタッフも「診療所が隣なんで、何かあればすぐに朴先生に相談するよ」とのこと。
波照間小中学校での学童健診
波照間小中学校での学童健診
私は彼の仕事ぶりを見ながら、これこそがMcWhinneyのいう「家庭医」ではないかと思った。CTも複雑な検査もできない島の診療所は、まさに「家庭医」修行の道場であった。彼のようなマインドをもつ医師が鳥取大学で育ったことを誇りに思うとともに、ぜひ後輩たちの手本になってもらいたいと思った。距離的には遠い最果ての地、波照間島であったが、なんだか心が温かくなった、うれしくてたまらなかった、そんな不思議な旅だった。(谷口)
珊瑚の石垣と赤屋根
珊瑚の石垣と赤屋根
ヤギのナナちゃん
ヤギのナナちゃん